生前贈与

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すべての贈与が課税対象というわけではなく、課税されない贈与もあります。
親が子のために支出する生活費、教育資金、留学資金、結婚資金などは扶養義務者相互間贈与とされ、贈与税の対象にはなりません。ただし税法上は非課税ですが、民法上は目的を問わず相続人に対する生前贈与は特別受益となり遺留分基礎に算入されますから、遺産分割において考慮する余地が残ります。つまり相続税法と民法とでは扱いが異なるわけです。
相続の場面では、香典、花輪代、贈答見舞いなど、社会通念上相当と認められるものも非課税です。

 

(1)暦年贈与

暦年贈与では1年間に110万円の基礎控除があります。
年間110万円までは課税されませんから、余裕があるなら積極的な贈与をお勧めします。
たとえば相続税率55%の人に相続が発生した場合現預金に対しても55%の相続税が課税されますから、相続財産の中に120万円の現預金があったとしたら66万円相続税がかかることになります。ところがこの120万円を生前に贈与すれば基礎控除が110万円ありますから(120-110×10%)贈与税は1万円で済ませることができます。
相続税と比較した場合65万円の税効果が見込めます。これを10年続ければ650万円の節税ということになります。但し毎年贈与するならその都度贈与契約書を交わし、贈与者の口座から受贈者の口座に振込みをして贈与税の確定申告をする必要があります。なお、平成27年からの親族間の贈与については控除額が割り増しされています。

 

(2)相続時精算課税制度

相続時精算課税制度というのは60歳以上の親から20歳以上の子や孫に対して2,500万円までは無税で贈与ができるという制度です。
2,500万円を超えた部分については一律20%で贈与税が課税され、後に相続が開始したときは贈与した財産を相続財産に持ち戻し、相続税として計算し直すという仕組みになっています。結局あとで払うわけですから節税としての効果はありません。暦年贈与との選択になりますが、一度相続時精算課税を選択した場合は撤回ができません。生前に自社株等を贈与すれば後継者の確定ができる、アパート等の収益を無税で移すことができる等のメリットもありますが、暦年贈与の非課税枠をつかえなくなってしまう、遺留分を侵害してしまう可能性もあるなどのデメリットもあります。暦年贈与と比較検討したうえで選択してください。

 

(3)保険料贈与プラン

親から子に現金を贈与し、貰い受けた現金を用い子が親に終身保険をかけ、子の一時所得として生命保険金を受け取る。このようにして贈与金を生命保険の掛け金に流用する手法を保険料贈与プランといいます。
そもそも資産家は受け取る生命保険金についても高い相続税が課せられてしまうため、これを回避するために保険料贈与プランが考えだされました。相続人の一時所得として受け取った場合は
①払い込み保険料が控除できる、
②50万円の控除がある、
③保険差益が1/2控除できる等のメリットがあります。

この保険料贈与プランについては以下の要件を満たさない場合は被相続人の指示とみなされ、相続人が受け取った保険金はみなし相続財産となり、相続税の課税対象になりますので注意が必要です。

  • 毎年贈与契約書を交わす(毎年同じ日は避けたほうが賢明)
  • 過去の贈与税申告書を保管しておく(申告はしておくこと)
  • 贈与した人の確定申告で当該保険料を所得から控除しないこと
  • 贈与事実の心証が得られるように、親の口座から子の口座に振り込む

 

せっかくの節税対策が無駄にならないよう予め実務家に相談したほうが良いでしょう。

 

(4)贈与の留意点

  • 贈与は諾性契約ですが贈与契約書はちゃんと作成しておきましょう。
    300万円の贈与なら手取りは281万円あります。贈与税がいくらかかるか?と考えるより手取りで幾ら渡せるか?という視点で検討した方がよいと思います。基礎控除内の贈与ではあまり効率もよくないので、ちゃんと申告をして税金を払い効率のよい贈与にしたいものです。
  • よくお爺ちゃんが5~6歳の孫に贈与するケースを見受けます。
    しかしその子が預金通帳と印鑑の管理、口座の開設、お金の処分から運用まで自分でしているでしょうか?
    お爺ちゃんが用意した印鑑で口座を開設し、管理もお爺ちゃんがしている場合がほとんどです。贈与はあげた人ともらった人の認識意思表示の合致が成立要件ですから、このようなお金には税務調査が入ります。
    相続税を支払う人は全体の約8,3%(2019年)に過ぎませんが、そのうちのおよそ10%の人に税務調査が入ります。
    皆このような通帳や印鑑を持っていますが、このお金はいわゆる名義預金と称され相続税の課税対象となります。もらったお金はそのままにしておかないで不動産や株など受贈者の確定した資産に組み換えておけば心配はありません。
  • 子に対する贈与は平等にしてあげてください。
    あげる人も嬉しい、貰った人からも喜ばれ、皆が幸せになるような贈与が望ましいものです。贈与は円満な相続を実現するための道しるべかもしれません。あげるほうは上から目線であげるのではなく、贈与はしてもあまり口を挟まないほうが良いと思います。貰う人はちゃんと感謝の意を伝えること。
    これが贈与のマナーです。このようなことができている家族なら相続争いはおき難いと思います。

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