税コスト削減

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相続で取得した不動産はどのように評価するのでしょうか?
相続税法では相続により財産を取得したときの「時価」で評価するとしています。そしてその時価とは財産評価基本通達(路線価)によって評価した価額と定めているのです。
一度は耳にしたことがあるかと思いますが、土地については路線価を基本として土地の評価をすることになっています。評価方法については筆単位ではなく土地の利用単位ごとに区分して評価します。たとえば自宅の敷地が広いので、敷地の一部を貸し駐車場として利用しているような場合は、駐車場部分と自宅とを分けて評価することになります。ちなみに建物(アパート等は除く)は固定資産税課税標準額をそのまま評価額とします。
相続税は実際に取得した正味財産に対して課税されるものですが、ここでは税コスト削減についていくつか紹介したいと思います。

 

税コスト削減

 

(1)居住用財産の配偶者贈与

簡単にできる相続税対策として居住用財産の配偶者贈与があります。
居住用財産またはそのための取得資金として2,110万円(基礎控除含む)までは非課税で配偶者に贈与することができます。ただし、一次相続で本来支払う相続税はその分減少しますが、二次相続ではその財産に課税されますから、ただ先送りしたに過ぎないともいえます。手続き的には夫が所有する自宅家屋とその敷地の持分を妻に2,110万円分贈与するだけです。
要件としては婚姻期間が20年以上の夫婦であること。節税効果よりも譲渡益が出る場合に居住用財産の3,000万控除を夫婦で使えるという効果のほうが大です。これを狙うなら土地とともにかならず建物も贈与することです。2,110万円まで贈与税はかかりませんが、後日不動産取得税が課せられますから、費用対効果を考え実行してください。

 

(2)生前に所得を移転しておく

賃貸物件を多数所有している地主さんなどは家賃収入も多く、その分所得税も相続税も高い税率で課税されます。このような方は所得の基となる建物(アパートやテナントビル)を子に贈与、あるいは、子を代表者とした法人に売却して所得を移転させることにより相続財産は目減りし、子は納税資金を確保することができます。
ポイントは建物のみを子に贈与、建物のみを法人に売却すること。注意点としては、敷金や借入金等負担付贈与とみなされないように処理すること、契約形態は予めサブリースにしておくこと等ありますが、手法さえ間違えなければ効果は大です。ただし実行する場合は事情に通じたコンサルタントに相談してください。

 

(3)利用区分を分ける、又は同一にする

冒頭記したように土地を評価する際はその利用状況に応じ区分して評価します。この理屈を利用して自宅敷地の一部を駐車場にするとか、畑にするなどして用途を変更すればその土地の評価を下げることも可能です。一方で隣り合わせの利用状況の異なる土地を同一用途に戻して「地積規模の大きな宅地の評価」を適用させれば大幅に評価を下げる事ができます。

 

(4)あら捜し

土地の評価をする際は利用単位ごとに区分して評価します。
評価の基本は路線価格によりますが、ただ単に前面路線価格×面積で算出するわけではありません。その土地の間口、奥行、形状などによりそれぞれ画地調整率を乗じて算出します。
たとえば同じ100㎡の土地でも間口10m奥行10mの土地と、間口5m奥行20mの土地とではたとえ同じ面積でも同じ価格というわけにはいきません。前者は建物の建築や貸し駐車場その他様々な用途としての利用が考えられますが、後者はいわゆるうなぎの寝床といわれる地形であり、利用方法も制限されるためその分評価が下がります。物件の所在する地区区分により異なりますが、後者のうなぎの寝床地、は奥行価格補正率、間口狭小補正率及び奥行長大補正率を乗じて評価格を算出します。その他の減価要因として、地形が不整形である土地、道路に接していない土地、ガケ地、旗竿地、線路沿い、高圧線下などが考えられます。
評価は税理士さんの職域ですが、自分の所有する土地のあらを捜し、認識しておく事もコスト削減につながります。またそのような土地は相続人間で押し付け合いになりますから、生前に処分したほうが良いでしょう。

 

(5)税理士さんの選択

税理士さんの選択はとても重要です。必ずしも相続税を安くしてくれる税理士さんがよいとは限りません。
多少相続税はかかっても、相続人の生活設計や二次相続のことも考えた分割を提案してくれる、相続税に特化した税理士さんが一番良いと思います依頼後すぐに公図名寄帳などの詳細資料の請求があったか?
現場を一緒に見て周り、減価要因についての説明をしてくれたか?
年間10件程度の相続税申告を手がけているか?
2カ月ほどで概算相続税を提示してくれたか?
などが選ぶ目安となります。地主さんは特に慎重に選んでください。支払う相続税が数千万単位で異なることもあります。支払った相続税に納得できない方は「相続税・更正の請求」の項目をご覧ください。

 

(6)資産を組み替える

1億円の現預金はそのまま1億円で評価されますが、この1億円でアパートなどの収益物件を建てた場合その評価はどうなるでしょうか?
1億円で建てたアパートは5,000万円以下で評価されますから、これだけで5,000万円相続税の課税価格を減らすことが出来るわけです。
また、土地の評価も貸家建付地として評価が下がります。手持ち金が無い場合は土地を担保に借り入れを起こし建てたりもしますが、あまり無理な借り入れをして建てるのはお勧めできません。メーカーは「借金は相続税対策になりますよ」と建築を勧めますが、空室リスクや賃料デフレの話をしたでしょうか?周辺の賃料相場や空室率など事前に調査して、はたしてこの場所でアパート経営が成り立つのか?それくらい深堀して検討してください。結果はすべてあなた自身に降りかかってきます。
遊休地があるからアパートでも建てようかなどという気持ちでは、後で後悔することになりかねません。

 

(7)資産組み替え その2

手持ち金に余裕があるなら生命保険に加入するという手があります。
これは相続人が受け取った生命保険金については非課税枠が設けられていることを利用した相続税の対策です。
法定相続人が3人、現預金が5,000万円あったと仮定して比べてみましょう。

  1. なにもしない場合 → 現預金5,000万円としてそのまま評価される
  2. ② 5,000万円のうち3,000万円で終身保険に加入し相続人が3,000万円の生命保険金を受け取った場合 → 3,000万円に対して(500万円×3人)1,500万円が非課税となるので1,500万円が課税対象となる。残余の2,000万円とあわせた3,500万円が相続財産として評価される。結果として相続税の課税対象が1,500万円減少することになります。

このように手持ちの現預金を生命保険に組み換えることで相続税コスト削減になります。相続税対策として生命保険を活用するなら保障額の大小ではなく非課税枠を使い切ることが目的なので、終身保険がお勧めです。

 

(8)暦年贈与でこまめに贈与する

贈与には年間110万円の基礎控除があります。相続時精算課税を選択されていない方は暦年で110万円までは贈与税がかかりません。チリも積もれば山となり、毎年110万円贈与すれば10年で1,100万円。お孫さんに贈与すれば一代飛ばしますからさらに効果は大です。一番の効用は、子や孫がお金が必要な時に渡すことができ、円満な家族関係を築くことができるということではないかと思います。

 

(9)鑑定評価を利用する

相続税の土地評価は路線価格が基本ですが、この路線価格は後追いで付されるため相続開始時の経済事情が正しく反映されていないこともあります。その結果時価に比べて相続評価のほうが高額になってしまうことになります。そのほかにも路線価格を基に評価すると高額になってしまう市街地の山林や傾斜地、評価が難しい広大地なども存在します。どう評価するかは税理士さん次第ですが、「相場と比べてなんとなく高いな」と思ったら不動産鑑定士に鑑定評価を依頼するという手もあります。鑑定評価と路線価評価とでは数千万の差異が生じることもありますから、特に傾斜地や不整形な広大地、調整区域の雑種地などは検討する価値があります。税理士さんともよく相談して決めなければなりませんが、鑑定評価の必要性や申告リスクを説明してくれるような方なら納税者にとっては歓迎です。

 

(10)小規模宅地の特例

相続人が相続又は遺贈により取得した財産のうち、被相続人の居住に供されていた宅地や事業に供されていた宅地については、一定割合が減額されます。これを小規模宅地の特例といいますが、少し相続税がかかるようなケースにおいては上手に活用すれば無税とすることも可能です。条件等はありますが、詳細は税理士さんにお尋ねください。

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