更正の請求

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相続税の申告書は100人の税理士に依頼したら税額の異なる100種類の申告書ができる。少しオーバーな言い方ですが、現実として10%から20%の差は生じます。

土地資産家の場合は数千万もの税差額が生じることもありますが、原因としては得手不得手や匙加減などが考えられます。相続税贈与税の申告書を提出したあとに
「申告内容に間違いがあり相続税贈与税が過大であることを発見した場合」
「申告時点では間違いではなかったが、相続特有の後発事由の発生により相続税額が過大となった場合」
更正の請求手続きにより相続税額の還付請求をすることができます。更正の請求とは納税申告書等により既に確定した税額が過大であることを発見したときに、納税者が税務署に対してその是正を請求するものです。更正の請求には相続税法32条による更正の請求と国税通則法上の請求があります。特に多額の相続税を納付した場合は払い過ぎていないか?
検証してみる余地はあります。

 

(1)相続税法による更正の請求

次のいずれかの事由に該当したために相続税額等が過大となったときは、その事由が生じた事を知った日の翌日から4カ月以内に限り還付請求をすることができます。

  • 申告期限までに分割協議が調わなかったので、とりあえず法定相続分で申告し納税したが、後日分割協議が成立し法定相続分とは異なる分割をした
  • 認知に関する裁判が確定した、相続人廃除の裁判が確定した、相続回復請求権により相続が回復した、放棄の取り消しがあった、胎児が生まれた、失踪の宣告などの事由により相続人の数に異動が生じた
  • 納税後に遺留分減殺請求訴訟を提起され、裁判で返還の額が確定した
  • 遺贈の放棄または遺言書が発見された
  • 相続財産として申告した土地が、被相続人の財産ではなかったという判決があった
  • 相続開始後に認知された者から価格請求され、弁済額が確定した
  • 特別縁故者への財産分与が認められた
  • 申告期限までに分割協議が調わなかったので配偶者の税額軽減を適用できなかったが、後日(3年以内)分割協議が調い、配偶者の税額軽減が適用できるようになった
  • 相続開始年に被相続人から贈与により財産を取得していた
  • 申告期限までに分割協議が調わなかったので小規模宅地の特例を適用できなかったが、後日(3年以内)分割協議が調い小規模宅地の特例を適用できるようになった
  • 申告期限までに分割協議が調わなかったので特定事業用資産の特例を適用できなかったが、後日(3年以内)分割協議が調い特定事業用資産の特例を適用できるようになった

 

(2)国税通則法による更正の請求

基本的には(1)相続税法による更正請求が優先しますが、上記に該当しない以下のような場合も法定申告期限から5年以内に限り更正請求ができます。

 

  • 債務控除ができるのに控除しなかった
  • 特別障害者なのに一般障害者で申告をした
  • 特定居住用宅地なのに評価減割合を50%として申告をした
  • 相続人が父母なのに間違えて2割加算をした
  • 税率の適用を間違えて計算した
  • 奥行価格補正をしなかった
  • 不整形地なのに不整形地補正をしなかった
  • 地積規模の大きな宅地に該当するのに地積規模の大きな宅地の評価を適用しなかった
  • 借地権割合を間違えて計算した
  • その他、通達等に従わなかった結果、税額が過大となった

     

     

後発的事由として(2カ月以内)

  • 被相続人の債務として申告しなかった債務が、被相続人の債務であるとの判決が確定した場合
  • 被相続人の名義預金なので相続財産として申告したが、他人に対する相続税の調査で他人の被相続人の名義預金と指摘され(実質所有者は他人の被相続人だった)その他人に対して増額更正処分がされた場合。

 

どちらにしても計算などに間違いがあったときや、後日事情が変わり結果的に相続税を多く払い過ぎたことを発見した場合にはその分を取り戻すことができる可能性があるということです。

 

(3)更正の請求を検討したいケース

  • *未分割で申告し納税した場合

    ・配偶者税額軽減が適用できる可能性がある

    ・小規模宅地が適用できる可能性がある

  • *相続財産の中に地積規模の大きな宅地があったとき

    ・地積規模の大きな宅地評価が適用できる可能性がある

  • *市街化区域内に山林があった場合、調整区域内に広い雑種地があった場合、広い不整形地があった場合

    ・鑑定評価を使えば評価が大幅に下がる可能性がある

 

(4)まとめ

令和元年ではおよそ138万件の相続が発生し、そのうち相続税が課税された割合は8.3%でした。一方で税理士の数は7万人強ですから相続税の申告をしたことがない税理士さんもいるのです。また、会計を専門としている税理士さんに相続税の申告を依頼しても、相続税(資産税)と会計では業務も異質であるため、誤りが生じてしまうこともあります。
相続税の申告は、相続税に特化した税理士さんに依頼することをお勧めします。

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