遺言書の作成について

ホームへ戻る

遺言には自筆証書、公正証書、秘密証書などの種類があります。その他にも船が遭難した場合など特別の方式による遺言もありますが、公正証書がお奨めです。遺言は相手方の無い単独の意思表示であり、遺言者の死亡によりはじめて効力が生じます。しかし遺言者の死亡後に遺言の真意を確かめることはできませんし、他人による偽造や変造などの恐れもあります。そのため遺言を作成する場合は厳格な方式に従わなければなりません。要件を満たしていない遺言は無効となりますので注意が必要です。また、遺言者が生存中は遺言者自らがいつでも自由に遺言を撤回できますし、内容を変更することもできます。遺言に書いたからといってその土地を処分することができなくなるわけでもないし、口座の預金が使えなくなるわけでもありません。遺言したとしても自分の財産ですから、自由に処分できます。遺言には相続人の無益な争いを抑える大きな効果があります。相続人が争うことの無いよう積極的に遺言をしてください。

※遺言者が外国籍を有している場合、相続については被相続人(遺言者)の本国法に従うことになりますので、予め充分調査してください。遺言の効力が反映されないこともありえます。

 

  1. 遺言でできること

    遺言者の最終的な意思表示として相続に関すること、遺産の処分に関すること、身分に関すること、遺言執行に関することなどが遺言でできます。

     

    • (あ)相続に関することとしては、相続人の廃除や取り消し、お墓や仏壇の主宰者の指定、相続分の指定、特別受益の持ち戻し免除、遺産分割方法の指定などができます。
    • (い)遺産の処分に関することとしては、遺産の処分の方法、寄付行為、生命保険受取人の指定や変更などができます。
    • (う)身分に関することとしては、非嫡出子の認知、未成年後見人の指定などができます。
    • (え)遺言執行に関することとしては、遺言執行者の指定ができます。
    • (お)上記法定外事項として付言ができます。どのような思いでこの遺言書を作成したのか?相続人がこの遺言を素直に受け容れられるように付言は必ず添えてください。

       

  2. 遺言の種類
    • 自筆証書遺言
      要件:遺言者が遺言の全文(財産目録はワープロでも可)、日付、氏名を自分で書き、これに印(認め印可)を押します。自筆証書遺言中に加除や訂正があった場合は変更箇所を訂正し有効な遺言とすることもできますが、訂正要件が複雑なので書き直したほうが良いです。吉日という日付は無効となりますから作成した日付を記載してください。
      メリット:作成が簡単でいつでも書くことができます。誰にも知られずに遺言書を作成することができ、費用がかかりません。一度試しに書いてみることをお勧めします。
      デメリット:方式に不備があったり、認知症などにより遺言能力が争われたり、内容が不完全なため、遺言者が意図したとおりの効果が実現できないこともあります。また紛失や隠匿、偽造変造のおそれもあります。自筆証書遺言は家庭裁判所の検認手続きが必要ですから、相続人全員が家庭裁判所に呼ばれその場で開封をしなければなりません。
      注意点:目的物を明確に表示すること。たとえば財産が土地なら地番を、建物なら家屋番号で表示してください。預金なら○○銀行○○支店、口座番号まで記載してください。無効になっては意味がないので、専門家に相談しながら進めたほうが良いでしょう。

       

    • 公正証書遺言
      要件:証人2人以上の立会いが必要ですが、それ以外これといった要件はありません。公証役場に赴き遺言の趣旨を公証人に口授し公証人が遺言書を作成します。これに遺言者と証人が署名押印をするだけです。
      メリット:公証人が整理し作成するので無効になるおそれがほとんどない。公証役場で保管されるので、紛失隠匿や偽造変造などの心配がない。家庭裁判所の検認手続きが不要。
      デメリット:印鑑証明書や証人2人の手配など若干の手続きが必要です。遺言者が自ら証人をたてた場合その証人から遺言内容が漏れる事もありえます。(費用はかかりますが公証役場でも証人を用意してくれる)財産の多寡により手数料がかかります。
      注意点:予め公証人との打ち合わせなども必要となるため、すぐに遺言書ができるわけではありません。

       

    • 秘密証書遺言
      要件:遺言者が遺言書を作成しこれに署名し印を押します。遺言書を封筒に入れ同じ印章で封印をする。遺言者が公証人と証人2人以上の面前でこれを提出し、筆者の住所氏名を申述したうえそれぞれが確認し署名押印をします。
      メリット:内容の秘密が守られる。偽造変造のおそれがない。費用は11,000円だけで済む。代筆でもよいし、パソコンやワープロでもよい。但し遺言書への署名押印は必要です。
      デメリット:印鑑証明とか証人2人とか若干の手続きがかかる。遺言の内容は漏れないが、遺言をしたという事実が証人から漏れることもありうるし、紛失隠匿の可能性は残る。家庭裁判所での開封と検認手続きが必要です。

       

  3. 留意点

    どの遺言でも同じですが、遺言書の中で遺言執行者を指定するのが原則です。遺言執行者とは遺言の内容を忠実に執行する人のことをいいます。遺言書の中で「この遺言の執行者を○○○○に指定する」と氏名を記載し、遺言執行者の住所、職業、生年月日も記載してください。遺言執行者には貸し金庫の開扉権限、内容物の受領、預貯金の名義変更、払い戻しなど、遺言を執行するために必要な一切の権限も与えておくようにして下さい。スムーズな処理ができます。

    法的な効力はありませんが、付言は必ず添えてください。どのような気持ちでこの遺言を作成したのか・・・なぜこのような分け方をしたのか・・・など、恨み事は書かず、相続人が素直に遺言を受け容れるように。付言には紛争を抑える効果があります。

    • 予備的遺言の必要性。たとえば親が「長男Aに相続させる」という遺言をしたとしましょう。しかし親よりAが先に亡くなることも充分ありえます。もしそうなった場合その遺言は無効となってしまいます。そういうことも想定して「遺言者より長男Aが先に亡くなった場合は、長男Aに相続させるとした財産は長男Aの長男に遺贈する」としておけば親から長男Aの長男(親から見たら孫)に財産を渡すことができます。このような遺言を予備的遺言といいます。
    • 遺言をする際相続人に対しては「○○不動産を相続させる」という文言を用いてください。農地法や借地借家法、登記手続きを考慮したとき実務上「相続させる」という文言は大きな意味を持ちます。相続人以外に財産を与える場合は共同相続人全員の印鑑が必要になります。相続人以外(たとえばAさんとします)に財産を与えたい時は「Aに遺贈する」という文言を用い、その遺贈についての遺言執行者をAさん自身に指定してください。そうすればAさんは単独で登記申請ができます。
    • 遺言をする際には遺留分に対する配慮も必要です。相続人には必要最低限残さなければならない相続分というものが存在しますが、これを遺留分といいます。遺留分を侵害した遺言も当然に無効というわけではないので、遺言書どおりに相続できますが、後日遺留分を侵害された相続人から遺留分侵害額請求をされた場合、侵害した部分については無効となります。直系尊属のみが相続人となる場合の遺留分率は1/3、配偶者や子供が相続人となる場合は1/2です。兄弟姉妹には遺留分はありません。遺留分と特別受益の項目も参考にしてください。
    • 夫婦間で遺言をする場合は各々別々に遺言書を作成してください。連名でした遺言書は無効となります。

お問い合わせはこちらからどうぞ